愛知県の葬儀にはしきたりがあります。まず通夜の時に近親者が香典と一緒にさびしみまいを遺族に渡す風習があります。これはまんじゅうや菓子、酒、缶詰などの食べ物や飲み物がよく選ばれています。通夜の振る舞いで弔問客にふるまわれる他、通夜の後、遺族や近親者が故人のそばで過ごす時にみんなで食べて残った分は葬儀の参列者などにも配り分けられています。
そして瀬戸地方では出棺の後に喪主が白装束で火葬場へ行くしきたりが残っている地域もあります。出棺の時に喪主だけでなく会葬者全員が幽霊がつけているような三角の布を頭に巻く地域もあります。仏教では宝冠と呼ばれる三角の布は死に装束の一部で故人がつける物ですが、参列者もつける風習が広まっています。
そこで悪霊を防ぐ魔よけのため参列者に死という災いが参列者に移らないようにするためです。
ものの考え方や捉え方は人それぞれに異なります。これは葬儀についても同様です。お葬式には様々なしきたりや儀礼が伴われますが、これも人によって感じ方は様々です。そのため、しきたりや習慣をどう理解し、解釈するかは個人ひとりひとりに委ねられています。
ただお葬式は故人と遺族のためにあるので、遺族の気持ちに寄り添うことができるような行動を常に心がけることが重要だといえます。愛知県の葬儀では、ここ20年ほどのあいだで、都市部を中心に簡略化される傾向にあります。
しかし、まだ風習が残っている地域も存在しています。自宅に安置している遺体を、僧侶が訪れて読経が始まるまでは、あたかも生きているように扱うという地域が一部に残っています。また火葬においては、県中心部は今でも告別式の前に行う前火葬と終わってから行う後火葬が混在していますが、山間部や海沿いでは前火葬を行うところが多くあります。
簡略化の傾向があるとはいえ、愛知県には様々なしきたりや風習があるということは、葬儀に参列する際には、覚えておくことが必要です。